<4> シャボン玉文化

2014年04月25日

 そうか、文化も芸術も、そう難しいことないのか。見る方が構えるからいけないのか。心にぬくもり、あったか味みたいなものを感じることが出来れば、それが文化ちゅうもんやし、それをちょっと高めて芸術ちゅうことか。

 あれも文化、これも文化と、鋳型をはめない文化を思って、理事長ブログ始めて、4回目で、このテーマにぴったりと思ったのが、シャボン玉展覧会だった。なん
でシャボン玉がアートで、展覧会なんか…、今年3月初めに会場の京都市東山区の神宮道にある「GALLERY はねうさぎ」へ鑑賞に行った。作家さんは京都造形芸術大講師の藤原昌樹さんで、本職は ?という言い方は変だけど、鉄の彫刻作家さん。お母さんの和子さんは洋画家で、二人して滋賀県大津市南比良にアトリエを持っていている。

 この藤原さん、同じアトリエで2年半前にシャボン玉研究所を立ち上げた。どうしてシャボン玉研究か? 会場にいた藤原さんに聞くと、鉄の作品はどう観たらいいのかわからない、何時も難しいーと言われるのがきっかけだったと言う。シャボン玉なら、ああ~きれいと一言で楽しんでもらえるし、それがアートの入り口だし、それで作品を観る自由な発想が生まれるーと思って始めたと話す。ギャラリー2階の展覧会場の奥、壁面に琵琶湖岸や島根県隠岐の島で飛ばした巨大なシャボン玉がふんわり、ふんわり映っている=写真左上=。何回も何回も、形が様々に変化して、同じ形は一度としてない。透明なシャボン玉はいろんな光りが反射して、神秘な色あいを出している。背景の琵琶湖や日本海、まるごとキャンバスだ。藤原さんは巨大シャボン玉の「造形美」「色彩美」を芸術という観点から捉えているーと自らのフェイスブックでコメントを出している。

 飛ばして、遊んで、観て楽しむシャボン玉研究所の展覧会開催。これは、ひょっとして日本初、いやいや、世界初かもしれない。ストローでプッと吹いて、屋根まで飛ばそ!が、もともとのシャボン玉だけど、藤原さんは台所洗剤にラム酒、ガムシロップなどを加え、液の研究を重ね、ふくらます輪も種々考案して、長~くて、形がうねうねするシャボン玉づくりに成功している。これまで巨大なシャボン玉記録は長さで20㍍という。展覧会場、フワフワ飛ぶシャボン玉のアート映像見ていて、淡く飛んで、はかなく波間に消えて…、これは人の心をときめかす一瞬の文化、芸術だと思った。
※ シャボン玉研究所の所在は〒520-0511 大津市南比良1001-47

【藤原さん略歴】 2005 新鋭美術選抜展[京都市美術館]
2006 美術工芸新鋭選抜展 -2006新しい波-[京都文化博物館]
2010 2010 CAF.Nびわこ展[大津市歴史博物館/滋賀](’11・’12・’13)
2012 隠岐しおさい芸術祭[隠岐諸島西ノ島全域/島根]
2013 日吉大社芸術祭[山王総本宮 日吉大社/滋賀]

  

Posted by 滋賀県文化振興事業団 at 16:30Comments(0)その他

<3>滋賀会館前の里ざくらに思う散りゆく文化

2014年04月16日

「風にちる 花の行方は 知らねども 惜しむ心は 身にとまりけり」

  この句、4月15日付け日経新聞の1面コラム「春秋」に載っていた。平安時代の俳諧師、西行法師の詠んだ句である。春秋のコラム氏は、~桜は最後の瞬間まで気力を張って咲き切り、ふと思い立ったかのように飛び去って行く」と書き、西行は咲く桜だけでなく、人の心の内に残る桜を多く詠んだと、上の一句を紹介していた。

 今、滋賀県庁前の滋賀会館正面、遅咲きの里ざくらが咲き始め、満開になろうとしている。旧東海道側に1本、県庁前側に2本、ピンクの大きな八重である。滋賀会館は昭和29年6月15日開館、今年で還暦を迎えて、その文化機能としての役割を終え、秋から冬にかけて建物は撤去、更地になって、4年後にはNHK大津放送局に生まれ変わる。この里ざくらは開館当時からではないらしいが、最後に管理していた大谷博さんによれば、樹齢にして30年以上は経っているのでは―と言う。毎年毎年、ハッとさすような鮮やかな花を咲かす。

  西行の詠んだ一句と滋賀会館の最後に咲く、この里ざくらに思いが重なる。日経コラム「春秋」に戻って、その書き出しは~何十万枚か。それとも何百万枚だろうか。桜の花の満開のころ、日本全国でどれだけ多くの人が、携帯でシャッターを切ったことだろう~だった。幾星霜の滋賀会館もそうだ。大ホールの映画、演劇、講演…、ギャラリーの展示、図書館、結婚式場、社交クラブ…、どれだけ多くの県民がセピア色の思いを刻んでいるだろう。夏から秋、秋から極寒の冬を耐え、春を待って、滋賀会館前の里ざくらは、大輪の花を咲かせてきた。滋賀会館が消えて、今度どこで、咲くのかー、別れの時が来ている。

 今一度、日経コラム「春秋」である。~桜の気持ちになってみれば、ただ咲き、ただ散るだけかもしれない。人間からみるとそれは出会いと別れになる。……桜の季節が終わる。寂しさは胸にしまい、芽吹く若葉を見上げてみる。潔く生きる勇気が伝わってくる」と結んでいる。このコラムと滋賀会館、そして、今、咲き誇る里ざくら…。出会いから別れへ、切ないが、コラム氏と同様、若葉の芽吹きに明日を思いたい。
  

Posted by 滋賀県文化振興事業団 at 13:32Comments(0)その他

<2>滋賀出身自慢文化

2014年04月08日

 かっこよく、理事長ブログ始めて「あれも文化、これも文化―BUNKA考」って、タイトル付けて、気取ってみたが、さて何を書こうーかと思う段になると、この気取りが邪魔になる。それでまあ、原点はなんでも文化なんやし、我が日常の中の、見たり、聞いたり、読んだりしたことを書くことにして、今回は第150回直木賞作家・姫野カオルコさんである。

※写真は4月8日付け朝日新聞朝刊22面、朝日新聞デジタルPR面から転載  なんで姫野さんかというと、滋賀県甲賀市の出身だからだ。滋賀出身の女性作家さんと言えば、経済小説を書き、TVのコメンテーターとして良く出る幸田真音さん(こうだ・まいん、1951年生まれ)の存在があるが、直木賞作家となると、男性含めて、誰もいない。だから、もっと、直木賞の姫野さんは滋賀県出身や、どうやーと、誇ってもいいと思ったからだ。それで、姫野さん、どこの出身かというと、八日市高校出身である。

 だから通学は、まず近江鉄道だろう。年齢は昭和33年生まれで、誕生日が過ぎていれば56歳。職場に同年齢の職員さん多く、中には故郷が同じという職員さんもいる。姫野さんの直木賞の受賞作「昭和の犬」も、その他の著作もまだ読んでないけど、ネットなんかで読者感想を調べると、滋賀の情景が出てくる場面が多いそうな。そうなると、ますます読んでみたい気がする。

 東京へ出て、青山学院大文学部の日本文学科卒業で、最初は雑誌ライターになり、映画評書いて、初めて書いた小説が『ひと呼んでミツコ』で、1990年(平成2年)に出版社に持ち込んだ作品という。それ以来、書きまくって、直木賞候補に上がること、二度どころか、三度、四度で、万年候補と言われながら、5度目でついに金字塔を射止めた。初作から24年目だ。

 直木賞の受賞会見、トレーニングジムから直接駆け込んで、いつもどおりというジャージ姿も話題になった。審査員の一人、浅田次郎さんは「最も重要なのはオリジナリティー。姫野さんはデビュー以来、自分の世界を真っすぐ書く孤高の作家です。今回は、姫野さんに直木賞がねじふせられた感じの受賞ではないか。正直、頭が下がりました。受賞を決定づけた理由は、オリジナリティーです」と語ったという。故郷に戻って、錦を飾る直木賞受賞講演、いつどこであるのか、聴きたいものである。

  

Posted by 滋賀県文化振興事業団 at 16:59Comments(0)その他

<1>石橋文化

2014年04月01日

 まずは石橋研究の森野秀三さんに登場願おう。甲賀市在住、54歳。全国各地の石橋を訪ね歩いて、既にして22年経つ。太鼓橋、眼鏡橋、アーチ橋…、写真に撮った石橋はもう800か所以上というから凄い。石橋調査というジャンルの有無はわからないけど、有るとすれば、森野さんが第一人者だろう。

石橋調査文化賞事業団が事務局を持つ文化・経済フォーラム滋賀が毎年、募集している「文化で滋賀を元気に!賞」。昨年度で3回目、33件の応募があり、森野さんの石橋研究が他薦で候補にあがり、選考の結果、石橋調査文化賞という賞の名で受賞に輝いた。昔からさりげなくある神社などの石橋に光りが当たり、文化価値が大きくついた。石橋文化―、声を出して、そう発音すると、いやまさにピタッとくる。

 滋賀県教育会館であった平成25年度近江歴回廊推進協議会総会、森野さんが「湖国の石橋」と題して講演した。滋賀は全国的にも石橋が多い県だという。滋賀は「神の文化」「水の文化」があり、雨乞い神事のお礼で「神橋」が造られた歴史がある。江戸の寛永15年(1638年)に出来た多賀大社の石造り太鼓橋(太閤橋)はその一つだという。神様が渡る橋、庶民は渡れないという橋、他県にはないそんな橋が滋賀にはあるんですよーと誇らしそう言う。

 森野さんは、文化遺産としての「神さまの橋」は、今ならPRの仕方次第で、観光客を集める橋になるのでは…と話す。滋賀で一番古い多賀大社の石造り太鼓橋、大津市坂本にある国重要文化財・日吉三橋、旧東海道にある天井川をくぐる石部の石造トンネル・大沙川隧道、由良谷川隧道、甲賀なら十三の橋を巡ってあるく橋ウォークだって面白いと自らマップをつくる。石橋の効用、観光文化として、考えようで、はしばしの妙案は出てくるのでは…と。 ※ 写真は3月27日、県教育会館であった近江歴回廊推進協議会総会での講演から。  

Posted by 滋賀県文化振興事業団 at 13:00Comments(0)近江歴史回廊文化・経済フォーラム